個人輸入に必要な薬監証明とは?代行サービスと申請手続き〜取得の流れを解説

欧米で承認されている薬なのに、国内のドラッグ・ラグのために処方できずに悩んでいる医師が、個人で海外から輸入するケースが増えています。

輸入医薬品の使用は、助けを求めている患者に喜ばれるだけでなく、クリニックを経営している医師にとっては「自院の強み」にもなります。

しかし、自身で国内未承認薬を輸入することに抵抗感をお持ちの医師は少なくありません。例えば「薬監証明」という厚生労働省の許可を取るだけでも、事務量はかさみます。

そこで輸入業務を代行をしてくれる業者も登場しています。

医師が自分で輸入する場合と、輸入代行業者を使う場合のメリット・デメリットについてみてみましょう。

薬監証明とは

日本で承認されていない医薬品を輸入するには、厚生労働省の許可が必要になります。

輸入品が税関のチェックを受け「輸入OK」となることを通関と言いますが、海外の医薬品については、通関の前に行わなければならないことがあります。

医薬品を輸入する医師は、薬事監視専門官に医薬品輸入報告書という書類を提出し、「業としての輸入」に該当しないことを確認してもらわなければならないのです。

「業としての輸入」については、「商売としての輸入」という意味ですが、詳しくは次の章で解説します。

業としての輸入でないことの確認ができたら、薬事監視専門官は、医師から受け取った医薬品輸入報告書に「厚生労働省確認済」という丸印を押し、医師に戻します。

この「厚生労働省確認済」の丸印が押された医薬品輸入報告書が、薬監証明となります。

「薬」事「監」視専門官が、合法的な輸入であることを「証明」した書類なので、「薬監証明」というのです。薬事監視専門官は、厚生労働省の役人です。

ただ、医薬品輸入報告書という書類を1枚作成しただけでは、薬事監視専門官は「厚生労働省確認済」印を押してくれません。その他にもたくさんの添付書類が必要になるのです。

「業としての輸入」とは

書類の説明に前に「業としての輸入」について解説します。

国内未承認薬などの海外の医薬品は、

  1. 医師が自分の患者の治療のために輸入するか
  2. 医師が研究目的で輸入するか
  3. 患者個人が自分のために輸入するか

などに限られています。ここでは1と2について考えてみます。

1と2は、「業としての輸入」ではない輸入となります。

「業としての輸入」とは、転売のために輸入するなど、営利目的の輸入のことをさします。医師が自分の患者の治療のために医薬品を輸入することは、「業としての輸入」には該当しないのです。

ではどのようなときに「業としての輸入」と認められてしまうかというと、例えば医師が別の医師に医薬品を分け与えるために輸入した場合は、「業としての輸入」に該当します。

また、輸入代行業者が海外の医薬品を大量に輸入し、自社の倉庫に在庫として保管をして、医師から要請があったときに販売することも「業としての輸入」となってしまうため、違法行為になってしまいます。

つまり、医師が海外の医薬品を使う場合は、あくまで個人輸入という形態となります。輸入代行業者は、輸入のための書類の作成や、海外での薬の手配、そして支払いなどのお手伝いをすることになります。

薬監証明の取得の際に必要な書類

薬監証明を取得するために必要な書類は、以下の通りです。

医師が自分の患者の治療のために輸入する場合と、医師が研究のために輸入する場合では、必要な書類が変わってきます。

患者の治療目的 美容用医療機器 研究目的
輸入報告書2部 記載用紙はこちら
書き方の記載例と注意事項
商品説明書1部 記載用紙はこちら
書き方の記載例と注意事項
必要理由書:1部 記載用紙はこちら
書き方の記載例と注意事項
医師等の免許証の写し:1部  
仕入書(INVOICE)の写し:1部  
税関からのはがきの写し(国際郵便(EMS)等の場合)、または
航空貨物運送状(AWB)の写し(航空便の場合)、または
船荷証券(B/L)の写し(船便の場合):どれか1部
 
返信用封筒:1部  
(以下品目受領後提出)  
医療従事者用美容用医療機器輸入通関ご受領・受領報告書1部  
海外発送元が発行する納品書:1部  
輸入品目の試験研究計画書1部 記載用紙はこちら
書き方の記載例と注意事項
委託先との委受託関係が分かる資料:1部

まずは、治療目的と研究目的の両方で必要な医薬品輸入報告書ですが、ひな形は以下のようなものです。( )の中に、「医薬品」を記入して使います。

品名や数量など、かなり細かく申告しなければならないことがお分かりいただけると思います。

医師自身の個人情報もしっかり書かなければなりません。

出典:近畿厚生局ホームページ

患者の治療で医薬品を輸入するときに使う場合には、必要理由書と商品説明書が必要となります。治療上必要な理由は、詳細に記さなければなりません。

商品説明書については、化学名や一般名も正確に書かなければならず、さらに効能・効果まで尋ねられています。

医薬品輸入報告書、必要理由書、商品説明書は、厚生労働省のホームページからダウンロードして記入します。

出典:近畿厚生局ホームページ

一方、研究目的での書類では、試験研究計画書の提出が必要です。これは医師が輸入医薬品をどのような研究のために使うのかといったことを記します。

委任状とは、医師が輸入手続きを輸入代行業者に委任するときに必要な書類で、これも治療目的と研究目的の両方で必要になります。もちろん、医師が自身で輸入手続きを行う場合は必要ありません。

医師免許のコピーは、いずれの場合も提出が義務付けられています。

インボイスとAWBは、医師にとっては耳慣れない書類ではないでしょうか。

インボイスは日本語で「仕入れ書」といいます。医薬品の輸出国の製薬メーカーまたは製薬卸会社などが、個人輸入をする医師に対し、医薬品の発送を通知するために作成した書類です。インボイスには、医薬品の品名、種類、数量、価格、代金の支払い方法、医薬品を輸出する者と医薬品を輸入する者の住所と氏名が記載されています。

AWBはAir Waybillの略で、航空貨物運送状といいます。航空貨物の運送のための基本となる書類です。医師の個人輸入の場合、医薬品の数量が限られているため、船便ではなく空輸することがほとんどです。

インボイスもAWBもコピーを厚生労働省に提出します。

薬監証明以外にやらなければならないこと

いかがでしょうか。薬監証明を得るには、これだけの書類が必要になります。しかもこれらの書類は医薬品1品ごとに作成しなければなりません。がん治療で海外の医薬品を輸入する場合、2、3種類ではおさまらないことが珍しくありません。その場合、事務量は2倍、3倍と膨れ上がっていくのです。

恐らく、これだけの書類を作成するのに、びっしり丸1日必要になるでしょう。

しかも、これだけ苦労して行う薬監証明の取得は、通関のためだけの作業です。輸入にはその他にもたくさん仕事があります。

下のチャート図は、厚生労働省が医薬品の輸入の流れを解説したものです。

出典:関東信越厚生局

「輸入品の流れ」とは、実際の医薬品がどこに保管され、どこに到達するかを示しています。

「薬監証明の取得に関する連絡」は、「国際宅急便」から「輸入者」に矢印が向いていて、これは宅配業者から医師のところに連絡が入ることを意味しています。

「薬監証明の流れ」では、ここでは輸入代行業者=通関業者を使った場合を示しています。

もし医師が単独で医薬品を輸入しようとした場合、この「3つの矢」の流れを、すべて1人で追跡しなければならないのです。

それだけではなく、関係機関から問い合わせの電話もやってきます。それにもいちいち対応しなければなりません。

輸入につきもののトラブルが発生すれば、それにも自分で解決しなければならないのです。

医薬品を医師が個人で輸入するときの大変さ【その1】どこから買うか

医薬品の輸入を医師が単独で行うことの大変さは、これだけではありません。

最初におとずれる壁は、どこから買うかです。医師が海外の医薬品を見つけるのは、論文や医学雑誌などだと思います。製薬メーカーは、インターネットで調べられるかもしれませんが、どの店で買うことができるのかは、別途リサーチが必要になります。

国内で医薬品を手配することを想像してみてください。

製薬メーカーのMRや薬品卸会社の営業パーソン、さらに調剤薬局の薬剤師や、自院の薬剤師たちのサポートがあってようやく医師の元に医薬品が届きます。

医師が単独で医薬品を輸入しようとする場合、こうしたサポートなしに、すべての手配を海外で行わなければならないのです。

もちろん「海外で」といっても、医師が外国に出向いて買い付けるわけにはいきませんので、電子メールや電話などでやりとりすることになります。

そして目当ての医薬品を取り扱う業者が見つかったとしても、その業者が輸出手続きに協力してくれなければ、輸出を手伝ってくれる別の業者を見つけなければなりません。

そうなると、医薬品の取り扱い業者と、輸出手続き業者の2社に手数料を支払わなければならなくなります。

輸出してくれる業者が見つかってからも、作業は続きます。

医師が必要とする医薬品の数より、輸出する業者が定めている最低出荷数が多い場合、そのまま大量に買い付けるか、もしくは単価が上がってもいいので小分けにしてほしいと依頼するかしなければなりません。

こうしたやり取りは、面倒なだけでなく、時間がかかります。時差があるので、日本の医師がメールで問い合わせても、返信が24時間以内にあればよい方でしょう。

医薬品を医師が個人で輸入するときの大変さ【その2】支払いはどうすればいいのか

輸出業者を選定でき、医薬品の輸出量も決まったとします。次の壁は支払いです。

医薬品の代金のほか、輸送費を支払わなければならないのですが、問題は支払うタイミングです。

医師がその業者と初めて取り引きする場合は、その業者は医師に、前金を要求するでしょう。しかし前金を支払ってしまったら、医師は医薬品が手元に届くまで毎日心配し続けなければなりません。

また、届いた医薬品が傷ついていたり、数量が違っていたりしたらどうしたらいいのでしょうか。保険はどの範囲でかけたらいいのでしょうか。

輸入には事故がつきものです。

つまり、医師が単独で医薬品を輸入することは、大変なばかりか金銭的なリスクを負うことにもなるのです。

そして最大のネックは、繰り返しになりますが、時間がかかることです。

期日通り医薬品が届かなかったら、予定していた治療や研究が遅れることになるのです。

輸入代行業者に依頼することのメリット

輸入代行業者に依頼することのメリットは、大変さと金銭的リスクを回避でき、時間を短縮できることです。輸入代行業者に依頼すれば、大体、支払いから1~2週間程度で医師の手元に医薬品が届きます。もちろん海外の事情がからめば、この限りではありませんが。

また、海外の医薬品が国内に到着した時点でのキャンセルはできませんが、入金前であればキャンセルできるのが一般的です。

ただでさえ忙しい日常業務を送っている医師が、輸入業務でさらに忙殺されることは、もったいないことです。

輸入業務は心理的ストレスがとても大きい仕事です。海外の医薬品を使うという行為自体、医師には大きなプレッシャーがかかっているはずです。余計なストレスを排除するために、輸入代行業者を使っている医師は多いのです。

医薬品を輸入する上での厚生労働省の注意

これまで医薬品を輸入したことがない医師向けに、厚生労働省が出している注意を紹介します。

医師が患者の治療のために医薬品を個人輸入できるのは、次の場合です。

  • 治療上の緊急性がある
  • 国内に代替品が流通していない
  • 医師の自己責任で使用する
  • 自分の患者の診断または治療に供する

国がこのような規制を設けているのは、効果がない医薬品や有害な不良品が国内に流通しないようにするためです。

海外で承認されていて、まだ日本で承認されていな医薬品は、建前上、日本政府としては有効性と安全性について確認できていない、ということになっています。

ですので、医師による医薬品の個人輸入は、厚生労働大臣や都道府県知事の許可や登録が必要になるのです。

そして、だから転売などを目的とした商売、つまり「業としての輸入」が禁じられているのです。

また、次のケースでは、いくら医師が「患者の治療のために輸入する」と主張しても、医薬品の輸入が認められないことがあります。

A:輸入する医薬品の数量が、治療に要する範囲を超えている場合

B:輸入しようとしている医師の治療範囲を超えている医薬品の輸入

Aについては、転売目的と疑われるだけでなく、上記の「治療上の緊急性」にもひっかかります。またBについて厚労省は、美容整形外科の医師が抗がん剤を輸入しようとした場合や、歯科医が精神神経系薬剤を輸入しようとした場合を想定しています。

医療以外のビジネス部分をサポート

法律では輸入代行業者が医薬品の効能などを説明することは禁じられていますが、現地で発行されている資料などを入手することは認められています。

医薬品の輸入には、医療に関すること以外の「ビジネスに関すること」が多数発生します。その支援をするのが、輸入代行業者の役割といえるでしょう。